私はいつからプールが嫌いになったんだろう?
いつまで楽しく泳いでいた?
最後の記憶。
その家に暮らした時期はとても短かかった。
向かいに公園がある古い家。坂道の途中。
小学3年生の頃だった気がする。
その公園の隣、つまり私の家の斜向かいに暮らしていたお兄さんのことを思い出した。
お兄さんは何歳だったんだろう。名前も思い出せない。元から知らなかったのかもしれない。
お兄さんは木目のセドリックに乗っていて、たまにアメリカっぽい奇抜な色のおもちゃをくれた。
特によく覚えているのがドナルドダッグのペッツで、首を曲げると出てくるラムネのようなお菓子はあまり美味しいとは思わなかったけれど、何となくおしゃれっぽい感じがした。このお菓子を全部食べちゃったら中身はどこで買えるんだろうと不安でほとんど食べなかった。 私の家には無い奇抜な色。
夏休み。
ぼんやりとした記憶だけれど、私はそのお兄さんと市民プールに行った。
私の手を取って、泳ぎを教えてくれた。
お兄さんのパサパサの金髪が濡れていた。
何故そのお兄さんとプールにいたのか。
他の友達も家族もいなくて、お兄さんと私だけだった。
それは憶えている。
それからすぐ近くだったけれど、新しい家が建ったのでそこに引っ越して、お兄さんと会うことはなくなった。
公園に遊びに行った時に木目のセドリックが駐車場に停まってるのは見たけれど。
多分それがプールで楽しく泳いだ最後の記憶。
今でも私はプールは大嫌いで、最後に入ったのは大学の体育で、入らないと単位をもらえないとのことで渋々入った。
その時、何かあったらドラマチックだし、トラウマを語れるかもしれないし、何かを訴えていたかもしれない。
けれど、ぼんやりとしか思い出せない、夏の思い出。
十三花
Author:十三花(TOMiCA )
拠点を名古屋から東京に移し、SM活動中。
まだまだ勉強中ですが、緊縛が好きです。
楽しいことが大好き。
SM以外の日常的な事も日々呟いています。