私が毎日の様に通る場所にその人は立っていた。
肩まで伸びた白髪混じりの髪から覗くイヤリングと、胸の膨らんだ白いフリルのブラウス。手にはスーツケース。
ここは昼下がりの歌舞伎町。
二人でスーツケースを転がしてホテルに入る。
ずっと独りでこんな事をしていたそうだ。ここから近いとも遠いとも言えない様な距離の田舎町で。
フリルのブラウスの中にはイギリス製のしっかり締め付けるコルセットを忍ばせて、くびれができている。
長い髪、大きな胸、くびれたウエスト。
「綺麗な髪ですね、そう、そんなふうに、片方の肩に寄せるのが夢なんです、」
私の黒髪を見つめるその瞳は心底羨ましそうだった。
少し日焼けした肌に色を重ねる。
「やり方がわからなくて」
「どれを買ったらいいかわからなくて」
私だって少女の頃、自分の顔に化粧をするとき、わからなかった。
試行錯誤の末いつのまにか日々の習慣となっていった。
眉毛を描いている時、そんな少女の自分自身を思い出した。
化粧をして、白髪混じりの髪を小さくまとめて茶色いウィッグを被り、ワンピースを着て。
私がいつも通っている歌舞伎町の道を腕を組みながら歩いた。
私にとっての日常の景色。
大きく引き伸ばされたアニメキャラの様なホストの看板、やたらと階段が目立つ商業ビル。
恥ずかしいより、興奮しているより、嬉しい気持ちが混ざっている顔でコーヒーを飲んだ。
加工アプリで撮影したその顔は、少女のようだ。
ホテルに戻り、私はボンデージに着替える。
縄で縛り、鞭を打ち、アナルに拳を挿れて。
そうだ私は昨日も鞭を握っていた。
だけど、この人、彼と言えばいいのか彼女と言えばいいのか難しいこの人は初めての出来事。
彼女、と呼んでみようと思う。
独りで、女性の服を着て、女の子に変身して、別の自分を楽しんでいた彼女。
優しい顔をした人。私は故郷の田舎町を思い出す。
もしかしたらあの小さな町にもこんな人がいたかもしれない。それはわからない。
特別な時間と非日常。
この時間は特別。きっと私が思っている以上に特別。
私は彼女の特別な時間を共有した。
理解していたつもりではいたけれど、彼女の仕草や私への眼差しから、私が思っている以上にこれはとてもとても特別な時間であることを再確認した。
私は、彼女の憧れの長い髪をきちんと手入れしてずっと伸ばしていよう。
もっと素敵になって、ずっと憧れの存在でいようとそう思った。
十三花
- 2021/11/24(水) 18:09:15|
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2021年12月1日(水)~12月29日(水)迄
※戸籍上、女性でしたらどなたでもご利用可能です。
料金 80分 13,000円
110分 16,000円
140分 20,000円
上記プラス
初回の方は初回指名料1000円+入会金3000円+ホテル料
会員様は指名料2,000円+ホテル料金
となります。
夏に開催した女性限定コース。年末に再び開催させて頂きます。
有難い事に、夏に来てくださった女性から、また女性限定コースをやって欲しいですとリクエストを頂きました。
SMは勿論。ただ会ってみたい、お話をしてみたいという女性も来てくださりました。
M男性との3人の時間もあり…目眩くひとときでした。
SMクラブ。興味があるけれど女性でも予約できますか?と今まで何度も質問を頂きました。
一歩、踏み出しやすいように。
お会いできるのを楽しみにしています。
ご予約はこちらから。
十三花
- 2021/11/22(月) 12:43:00|
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M美は言う。
十三花様とお揃いのタトゥーを入れたいです、でもこの前それは嫌だとおっしゃっていたので、十三花様が入れたかった柄、天使の羽根やガーターベルトを入れたいです、
豊胸手術をしたいです、十三花様の見ている目の前で
玉を摘出しているところを十三花様に見て頂きたいです、
ピアスを沢山入れて頂きたいです、
十三花様と一緒にSMクラブをやりたいです、そこでM美は道具として扱われたいです、
十三花様の他の奴隷さんとセックスをしたいです、十三花様の目の前で、
十三花様の好きなように改造して頂きたいです、
それをみんなに見られたいです、
仕事が終わったら、そうしたいんです、
M美は世界一の幸せ者です…………
これは妄想、言っているのが気持ちいいように思える。
もしこれが20代の若いM男性なら全部妄想と私は決めつけてしまうでしょう。
妄想と目標が混ざり合って、たぶん。M美の場合、半分は目標。
だって。仕事が終わったら——つまり、定年退職をするまであとほんの数年。
もしかしたら、少しずつ。現実になっていくかもしれない。
そんな、妄想と目標の混在の今が一番楽しくて、気持ちいいのか。
それともその日を楽しみに待っているのか。
十三花
- 2021/11/12(金) 23:13:00|
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さっき初めて会ったばかりなのに、鞭を打ち続けた。
細い身体に、少しだけのバラ鞭、そして無数の一本鞭。
只管に鞭を打った。
お仕置きではない。私たちは主従関係なんてまだ無い。
今後できるかもわからない。
ただ、鞭を打たれたい男と、鞭を打ちたい女。
ただ、というのは語弊がある。
この男は、私に鞭を打たれたかった。
四つん這いにさせて一本鞭を打つ。
少しわざとらしい喘ぎ声。
向かい合って鞭を打つ。
見つめ合いながら。
私は汗ばむほどに鞭を振る。
無数の痕。
わざとらしい喘ぎ声は止み、見開かれた目。
私は、怖くなってきた。
私も息が止まる。
穴に落ちていくような感覚、漠然とした恐怖。
怒り出したら?とか泣き出したらどうしよう?なんてそんなのではなくて、
真っ黒い穴にゆっくり落ちていくような、漠然とした恐怖。
でも鞭を振る腕は止まらない。
時が止まったようで、高速で過ぎていくようで。
どれくらいの時間だったのか、何発打ったのかはわからない。でも怖くなる瞬間は確かにあった。
また声が漏れて、ふっと元の時間戻る。
打ちたい女と、打たれたい男。
腕が疲れたことに気づいた私は、私の膝下にその男を呼び、こう聞いてみた。
「さっきね、なんかこわかった。見つめあってる目が見開いて、声が止んで。こわかった。でもやめられなかった」
男は顔を上げて
「入ってました」
と満面の笑みでそう答えた。
打ちたい女と、打たれたい男だったけれど。
私はまた、あなたを打ちたい。
十三花
- 2021/11/08(月) 00:29:26|
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