「もうこれ以上この話はやめましょうか」
そう言って笑うそのひとは私の生まれ育ったまちから電車に乗ってやってくる。
月に一度、決まって昼下がりに。
あのまちの靴屋さんも、花火屋さんも、神社も。
公園も美術館もみんなよく知っている。
これ以上話したらこの部屋を超えてどこかで繋がってしまいそう。
歌舞伎町。
二重にふさがる窓。
その重い窓を開けると磨りガラスが見える。
部屋の明かりを消して、外からの光で。
私は彼の細い身体を自然光で見るのが好きだ。
四角く閉ざされた部屋から、少しだけ外へ繋げる。
ここからあのまちが繋がるせめてもの証明のようだ。
あのまちの今を一通り聞き出したあと。
言葉は交わさずにゆっくりと縛る。
少しずつ繋がっていく。
これを必要とする体であることを知ったのはいつからなんだろう。
私はあのまちに暮らす幼い頃からこれを必要としていた。
縄跳びで縛ったのはいつだったか。
わかりやすく反応するその体を、微かに変わる息遣いを。
磨りガラス越しの、昼下がりの太陽は優しく照らす。
これが現実であることを。
あのまちに暮らしていたこと。
あのまちは少しずつ変わっていっていること。
今、このまちで。人を縛っていること。
彼を縛りながら、私は包まれる。
Author:十三花(TOMiCA )
拠点を名古屋から東京に移し、SM活動中。
まだまだ勉強中ですが、緊縛が好きです。
楽しいことが大好き。
SM以外の日常的な事も日々呟いています。