「ずっと見てました」
「何で会いに来なかったの」
10年近く前からネット上で私を見て憧れていたという年下の男の子。
偶然、バーで居合わせた。
その後すぐに、私の元を訪れた。
そしてもう一度訪ねる。
「何で会いに来なかったの、」
10代 前半の頃、大好きなアイドルがいたこと。
握手会へ行って憧れのアイドルを目の前にして夢が醒めたこと。
どうしてあんな人のこと好きだったのかわからなくなったこと。
もしかしたら私へもそうなるんじゃないかと怖くて会いに行けなかったこと。
今まで五人くらいのひととそれをやってみたけれど誰ともしっくり来ずに二度会うことはなかったこと。
などを聞いている途中で前髪を掴み顔を上げて瞳を覗き込んでみた。
その目は、体は。潤んで、微かに震え出す。
きっと君にはこっちの方が似合うよ、しっくりくる。
その頭を私の足元へ。
それからの時間はあっという間だった。
手枷、足枷、マスク、鞭。
ハイヒールが床を鳴らす。
上に乗り体温を確かめ合う。
鼓動はどんどん速まる。
夢から醒めたんだろうか。
醒めていてほしい、だってこれは現実。
私は理想通りだったんだろうか。
そうではない方がいい。
勝手な理想は壊したい。
まだ明るいうちにさよならをした。
その日にメッセージが届いた。
本日はありがとうございました。
———
自分はマゾだと強く実感させて頂けました。
———
引き続きよろしくお願いします。
などと綴られていた。
また会える日をほんのりと待とう。
Author:十三花(TOMiCA )
拠点を名古屋から東京に移し、SM活動中。
まだまだ勉強中ですが、緊縛が好きです。
楽しいことが大好き。
SM以外の日常的な事も日々呟いています。