罰
既に仕込んでしまっている身体だった。
その犬は。
鞭の音を聴くと安心すると言っていた。
目隠しをして身の動きを封じて、暫く閉じ込めてそれを解くと 怖かったですと心底安心したような声を出した。
首輪をはめるだけで、硬くなった。
こんなのはどう?なんて冗談めかしく話をするだけで眉をこまらせて興奮していた。
そんな犬が私を裏切った。
そしてそれへの罰を考えた。
あの犬が出来ないことは何。
私は剃刀と貞操帯の鍵をテーブルの上に並べた。
どっちがいいいか自分で選んでごらん。
賢い犬は鍵を選ぶと外されて、それはさよならを意味することだとすぐに悟ったのだろう。
迷わず剃刀を手に取った。
それで、私を切ってごらん。
そういうと途端に剃刀を持つか細い手は震え出した。
あんなに震えている手は初めて見た。
あの犬が出来ないことは何。
それは、主を傷つけることだ。
剃刀の刃は鈍い色をしていて、きっと光ってはいなかったのだろうけれど、記憶の中のそれはキラキラと光っている。
震える、と言うよりは暴れる犬の右の手首を掴む。
さあ、切ってごらん。
できなかったらさよならだ。
呼吸を荒くして。
犬は私の腕の内側に剃刀の刃を置いた。
私の白い肌にゆっくりと、赤い線が浮かんだ。
それから遅れて、ぷつぷつと赤い点がふたつ。
よくできました。これからも一緒だね。
どうしてそんな顔するの?笑ってよ、
涙を流す犬は無理矢理口角を上げた。
初めて見る顔。
そんな顔は私しか知らなくていい。
私は自分の内側で弾ける音を聴いた気がした。
震える犬を私は強く抱きしめた。
昔のはなし。
十三花
Author:十三花(TOMiCA )
拠点を名古屋から東京に移し、SM活動中。
まだまだ勉強中ですが、緊縛が好きです。
楽しいことが大好き。
SM以外の日常的な事も日々呟いています。