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13th floor

お~いお茶(濃い味)から駆け巡った走馬灯


清潔な人が好きだ。

だならなのか、私のマゾのシャワーは実に長い。

私が顔の上に座っても痛くないようにしっかりと髭を深剃りし、身体の隅々までくまなく洗い、湯に浸かる。


その間私は何をしているかというと。
ボンデージに着替え、ハイヒールを履き、これから行われる様々な行為に使用する道具を取り出す。

ひと息。

それでもまだ出てこない。

そんな時は自分の写真を撮ることがある。

そんな時間にさらっと撮影し、Twitterにアップした写真がこれである。



長い長いシャワーから出てきた馴染みのマゾに、さっき写真を撮っていたよ、と見せたときに気づいた。




お~いお茶が写っている!!しかも濃い味!

ああああ。

SMにお~いお茶濃い味。
PVCのコルセットにお~いお茶濃い味。
スパンキングラケットにお~いお茶濃い味。
ルブタンのハイヒールにお~いお茶濃い味。


これを見た人がショックを受けるかもしれない。

だってSMにお~いお茶濃い味だもん。

そこから19歳の私が顔を出した。


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時は平成、00年代後半。
勿論インターネットはみんな使っていた。
SNSも流行し、当時はmixiがよく使われていた。
しかし現在のようにSMの女王様や緊縛師やM女さんやM男さんが、個人個人のプレイを細かく公表していなかった気がする。

昭和の頃に比べれば随分とオープンな世界になっていたとは思うけど、今ほどではなかったと思う。


そんな頃に、高校生の頃からこっそり覗いていSMバーのウェブサイト。

私の第一志望は名古屋にある大学だったので、名古屋のSMバーのウェブサイトを見て、
「大学に合格して名古屋に暮らすことになったらここに行くんだ、むしろ働きたい」
と、勉強の糧にしていた。

そして見事第一志望に合格。

憧れのSMバーについに馳せ参ずる事になるのであった。

心臓が飛び出しそうになりながら怪しげなビルの9階へ。

扉に手をかけ。ダメだ、開く勇気がない。
扉の前で中の音に耳を澄ませて数分。

ついに扉を開く。

薄暗い照明、揺れる蝋燭の灯り。赤と黒。鉄格子。並ぶ鞭。
そしてそして、露出度の高いエナメルボンデージとサイハイブーツに身を包んだ、それはそれは美しい

「女王様!!」


19歳。根拠のない自信に満ち溢れた少女の何かが弾け、砕け、さらさらキラキラと砂のように舞う。

美しい、かっこいい、素晴らしい。

そんな言葉なんてどれも陳腐に思える。

それ程の衝撃。

初めに性癖等を記入するカルテのような調書のようなアンケート用紙。

SかMか。
どんなプレイが好きか。

初めて本物の「女王様」を目の前にした私は震えるボールペンで思わず「M」に⚪︎をつけたのをよく憶えている。

可愛らしいベビードールを着たM女さんと思われるスタッフに、「お飲み物は何になさいますか?」ときかれ、お酒を頼もうとしたら 未成年だからダメだよ、と言われコーラを出してもらう。

その時目に入ったもの。

緑色の四角いボトル。



………え??(心の声)


SMやる人が焼酎なんて飲むの……?!しかも鏡月????? は??(心の声)


衝撃的だった。
エナメルにもハイヒールにも鉄格子にも鞭にも縄にも。
全く似合わない。
焼酎。
ショック。

今思うと、SMの世界にいる人たちは、特別な人、夢の世界の人々、ファンタジーの、物語の中の人、そんな風に勘違いをしていた。

美しい女王様。
網タイツを履き、レースの下着をつけた男の人。
初めて見る数々のSMグッズ。

そこに、鏡月。



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あの頃の私のような少女が、あの頃の私が。

この写真を見たらショックを受けるはずだ。
あの鏡月のように。

寧ろ鏡月より酷い。お~いお茶濃い味だもん。

ああああ。でももうアップしちゃったからな。


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鏡月なんて!SMなんてもういい!!


なんて事には勿論ならずに、その後頻繁にそのSMバーに通っていた。

扉を開く時はいつもドキドキした。

コルセットを締めて頂き、自分のウエストにうっとりした。

初めて鞭を打たせて頂き、高揚した。

縛って頂き、女王様に恋に近いけど恋ではない感情が芽生えた。

様々なことを教えていただいた。

何より、誰にも話してなかったことを聞いて頂けた。

受け入れてもらえた。

そしてその後ひょんなことからそのお店で働く事になり10年以上SM業界に身を置いている。




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SMの世界は夢ではない。物語でもファンタジーでもなく、現実。
それは自分が経験して強く感じている。

突然世界が変わるわけではなくて、日常と地続きの特別な時間。


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19歳の私へ。

鏡月にショック受けたかもしれないけど、10年以上続けるんだからな。
お前はSMのときお~いお茶飲んでるぞ。しかも濃い味。

そのお~いお茶濃い味はお前のマゾが会う度買ってきてくれるやつだ。

お前はそのマゾの調教に成功し開発し続けている、鞭や縄や、自分の指や瞳や、様々なものを使い、そのマゾと深いところへいける。

そしてそのマゾはめちゃくちゃいいやつだ。

今のお前より、もっともっとSMにはまっていくからな。
  1. 2020/10/29(木) 19:24:24|
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十三花(TOMiCA )

Author:十三花(TOMiCA )
拠点を名古屋から東京に移し、SM活動中。
まだまだ勉強中ですが、緊縛が好きです。

楽しいことが大好き。

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