もの心付いた頃から成長が早かった。
私は、周りの子供達よりも頭一つくらい大きかった。
男の子も、もちろん、女の子も。
私より小さいのが当たり前だった。
力も強かった。
高学年になると世間は私を大人のような目で見た。
バスや電車で止められたことが何度かあるほど。
それは快感だった。
私はまわりの人より大きくて、強い。
中学に上がると、周りの人たちが徐々に成長し始めた。
私の身長は止まったままであった。
私よりも随分と小さくて、可愛くて、幼い男の子達が、日に日に私の身長を抜かしていくのだ。
それは抗えない焦りであり、ある種の恐怖であった。
私は誰よりも強いはずだったのに。
私の身長は6年生で止まった。
そして高校生になり、私よりずっと身体の大きい男の子が、私に懐いてきた。
彼らは私の無茶なお願いを頑張って叶えようとした。
それは思い返すと命令に近いものがあった。
強いもの、弱いもの。
身体の大きさではない。
焦りはいつのまにか消えていた。
子供の頃の事を人に話して、自分でも気付かなかった今の性癖に繋がる感覚に、今更ながら気付いた。
男の子はわたしより弱い。正確にいうと、強いのに私に従う。その感覚に何処か安心感を覚えているのかもしれない。
SMに目覚めたきっかけは?
初めて会うマゾたちに必ず訊く質問。
うまく答えられなくて当然。
きっかけなんていくつもあって、自身でも気付いていないこともいくらでもある。
十三花
- 2018/12/13(木) 03:41:08|
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私が小学校に上がる前までに暮らしていた家のお向かいに、ジュンくんという4つか5つくらい上の男の子が暮らしていた。
ジュンくんはお兄さんだし、近所には同い年の女の子が何人も暮らしていたから、ジュンくんと遊ぶ機会はそんなになかったけれど。
ジュンくんの家にはジュンくんのお父さんとお母さんと。そしてお姉さんが一緒に暮らしていた。
「ジュンくんのお姉さん」ではなく、「ジュンくん'ち'のお姉さん」と呼ばれていたし、私もそう呼んでいた。
ジュンくんの本当のお姉さんではない。
そんな噂を聞いたけれど。
本当のお姉さんじゃないということはニセモノなの?当時はよく解らなかった。
ジュンくんのお父さんとお母さんは、まちの大きな中華料理店で働いていた。
お姉さんはそのお店のウェイトレスだった。
夜、たまにそのお店に家族で食事に行くと、お姉さんが笑顔で「いらっしゃいませ」と迎えてくれるのだ。
真っ赤な、艶々のチャイナドレスに身を包んで。
ふわふわの茶色い巻き髪と、スラリと細い体に、チャイナドレス。
私はチャイナドレス姿のお姉さんを見ると、ドキドキした。
大きなメニュー表、回転テーブル。
華奢な指で並べられる中華料理。
目の前の料理よりも、私はお姉さんばかり見ていた。
そんなお姉さんは、丘の上の、同じような大きさの家が並ぶ、静かな住宅街には似合わなかった。
家の前で、近所の女の子たちと縄跳びやケンケンパやセーラームーンごっこをして遊んでいると、たまにお姉さんが車で出かけていく姿を見た。
ネイビーブルーのかっこいい車。BMW。
私はセーラームーンなんかよりずっとずっとお姉さんに憧れていた。
にっこりと笑いかけてくれる、大人の女性。
巻き髪、チャイナドレス、BMW。
幼い頃の記憶。
きれいなお姉さん。
不思議なお姉さん。
妖しいお姉さん。
憧れのお姉さん。
ジュンくんちのお姉さん。
私はすっかり大人になって、きっとあの頃のお姉さんよりも歳上になった。
チャイナドレスに袖を通した時。
お姉さんの妖しい笑顔が浮かんだ。
私はお姉さんの、名前すら知らない。
十三花
- 2018/10/29(月) 08:38:22|
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雑誌 トーキングヘッズ叢書No.76 に私のグラビアが掲載されています。
毎号テーマを掲げ特集が組まれるトーキングヘッズ 。
今回のテーマは「天使/堕天使」。
以前からたまにモデルをさせて頂いているフォトグラファーの堀江ケニーさんからお誘いを頂いた際、
「なんで、私が 天使/堕天使に?!」
と、四谷学院の広告のような気分でしたが。
添えてくださった気さくな文章を読んで、なるほど!と思うと共にじんわりとした感動をおぼえました。
取り扱い店舗はこちら。
http://www.a-third.com/th/info/thstore.html入手したら報告してね。
十三花
- 2018/10/28(日) 15:44:31|
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「Happy Halloween!!」
すれ違う仮装をした人々にそう声をかけられ、笑顔で鸚鵡返しをして手を振る。
写真を撮らせてほしいという人々に笑顔で答える。 ついでに私たちのツーショットもお願い。
今日の歌舞伎町はいつにも増して賑やか。
ハロウィン前の土曜日の昼下がり。
きっとわたしたちは、時計を連れて歩きたい我儘な彼女に付き合わされている彼。
そんな風に映っていたのでしょう。
わたしたちは今日を待っていた。
ずっと。
今日なら大丈夫な気がしていたんだ。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
彼に初めて会ったのは私が東京に来てすぐのことだった。
女装をしたい、そう言っていたけれど。
「友達からたまたま貰った」というドーランを持参してきたのだ。
なんとなく塗られてみたい気がする。
そんな風に言っていた。
顔を白く染めるとみるみる高揚する身体。
彼はそれから何度も「友達からたまたま貰った」ドーランを持って現れた。
それを否定したりはしなかった。
何となく、なんとなく。
彼は自分自身の性癖を受け入れられずにいるのではないかと思った。
私は特に何も聞かずに、顔や体に色を重ねた。
自身ですら受け入れられない性癖。
なら私が受け入れてあげるよ。
だって楽しいもの。私の楽しさがあなたの快感に繋がるなんて、こんな楽しいことはない。
それから暫くして、何故そうなったのか、ぽつりぽつりと語り始めた。
それは私と彼の秘密のお話だけれど。
きっとその頃から、自身の性癖を、自分自身を。
少しずつ受け入れられるようになっていった気がする。
「いつかはこの姿で外を歩いてみたい」
そんな風に言いだしたのはいつ頃だっただろう。
きっと、ハロウィンなら。
街中におかしな仮装をした人々が溢れかえる日なら。
大丈夫。出掛けられるはず。
わたしたちは今日を待っていた。
ずっと。
今日なら大丈夫。
黒い全身タイツに身を包み、顔を黒く塗る。
「時計になりたい」
それは彼からのリクエスト。
ベッドに寝かせて、馬乗りになり。
顔を黒く塗っていく。
私の太ももに、尻に。鼓動がどんどん伝わっていく。
体が熱くなっていく。
私は彼に合わせた服装をしてきた。黒いワンピースに帽子。
時計を連れて歩くのにはお似合い。
これはSMなの?
なんて野暮なことは聞かないで。
誰にも言えなかった秘密。
開けなかった心。
それを少しずつ解放してくれて、
「十三花さんに出会えて本当に良かったです」
なんて、少し瞳を濡らしながら言うのよ。
開けなかった心を開いてくれること。
これは私の快感の一つです。
十三花
- 2018/10/27(土) 16:18:56|
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