「今までの経験の中で、自分が一番自分だった」
もしも、ドラえもんの道具が壊れていてあの時しずかちゃんを助けに行くことができなかったらどうなっていたのでしょうか?
誰も助けに来なかったらどうなっていたのでしょうか?
「助けに来なかった場合」の物語を考えるのが好きだった。
ずっとあのまま囚われているしずかちゃん。
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囚われのお姫様に憧れていたというそのひとの普段の姿を私は知らない。
女装サロンで艶やかに化粧を施され、小花柄のワンピースを着ている「彼女」に会うのは二度目だった。
初めて会った時は女装サロンで撮影の為に縛った。
ずっと穏やかな空気のまま。
【もしも。助けに来なかったら?】
幼い頃の空想の世界は私のそれと交わる。
そんな空想の世界の扉を閉めて生きてきたひと。
そんな空想の扉を開いたまま奥に進んだ私。
鏡の前。
小花柄花柄のワンピースの上から麻縄を這わせて身動きを封じる。
乱暴にボールギャグを噛ませる。
ー誰か助けに来るかな? 呼んでみたらどう?ほら言ってみな、 「たすけてーー」 って
うまく発音できない「彼女」に丁寧に乱暴する。
吊り上げる、下ろす、あらゆる姿で縛る。
ずっと縛り続けていた。
汗をかく、乱れる、捩らせる、喘ぐ。
果てる。
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「今までの経験の中で、自分が一番自分だった」
ラブホテルに入るのすら初めてだったという「彼女」は正気を取り戻す少し手前くらいにそう言った。
幼い頃、布団を被って思い描いたという「囚われのお姫様」。
自分の中の空想の自分。
あのひとの中のあの子。
それを引き摺り出すことができた気がしたけれど、私の中の私もすっかり引き摺り出されてしまった気がして、ほんの少し恥ずかしくなって、夏休みの前の夜を思い出しました。
Author:十三花(TOMiCA )
拠点を名古屋から東京に移し、SM活動中。
まだまだ勉強中ですが、緊縛が好きです。
楽しいことが大好き。
SM以外の日常的な事も日々呟いています。