こわれる
縄を解いて床に寝かせていたらあの子はそう呟いたんだ。
だから私はきいてみた。
それはどんな音、ガシャンって壊れるの?
ちがう
バリンって壊れるの?
ちがう サラサラ
サラサラと壊れていく。
それは砂だったんだ。細かい粒。
だから私は息を吹きかけた。
ああ、無くなっちゃうよ。
あの子は震えて泣いていた。こわいって。
ああ、もう無くなっちゃったよ、もうどこにあるのか解らない、その一つ一つの粒は何だったの?
何でもなかったんだ、なにものでもない。
何でもない何かを固めて大切にしていたんだねきっと。
なにものでもないということを認めるのは凄くこわいんだ。
かきあつめようとしてももうそれがどれだったのかは解らない。
なんてそんな風に壊れていった私たちだけれど、時間という現実がきて、何事も無かったかのように、元の姿で、少し涼しくなった9月の歌舞伎町にすとんと着地して、重い荷物を引きずりながら歩いてさよなら。
たったの2時間だけ、こわれる遊びをした私たち。
もうすぐ彼岸。
- 2017/09/02(土) 18:15:46|
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