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13th floor

鱗粉


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飛んでいっちゃいそうね、



下着姿になった彼女の胸元は震えていて、まるでそこにいる蝶々は羽ばたいて飛んでいってしまいそうだった。



そんなことを考えながら肌に触れる。


それは皮膚に無数の穴を開けて置かれたインクでしかないことくらいは充分にわかっている。






彼女に初めて出逢ったのは2年前の夏だった。



「こうやって会ってみたいと思う女王様は初めてでした」



 確かそんな様な事を言われた気がする。





それからもう一度、彼女は私に会いに来た。


私と同い年の女。


ラッキーストライクの紫煙。


青紫の空気を纏った、少し陰のあるいい女。


そんな印象だった。



歌舞伎町のラブホテルで、私と同い年の女を縛って、打って、抱きしめた。


そして一緒に風呂に入った。








ホテルの扉を開いてその姿を見た瞬間に、2年前の雰囲気とは随分と違って見えた。



かわいい。私に懐く様な視線を向けてくる彼女は、(もしあるとしたら)尻尾を振っている。



私にずっと会いたかったんだ。聞かなくても解る。



私は? 1番お気に入りの赤いコートを着て、クリーニングから受け取ってきたブラウスを着て。


昨夜は早く寝た。




二年前は「女王様」に会いに来ていたのだと思う。


この日は違うように思えた。その内側の私に会いに来た。そんな気がした。






飛んでいきそうな蝶々を捕まえる。




彼女の真っ直ぐな視線に私は照れてしまって思い切りできない様な気がして、レザーの全頭マスクを被せた。


滑らかな肌に触れる。


呼吸が荒くなるのを感じる。




きっと私は彼女にとっての「女王様」ではないしそうでありたくもない。


彼女は私の「奴隷」ではない。


しかし友達でもなく、恋人でもない。


プレイメイトで片付けたくない。



きっと私たちが繋がるのに1番適した方法がこれだっただけ。


関係に名前をつけなくてもいい。






彼女の事をこうやって思い出しながら言葉を綴ると、暴れる蝶々の鱗粉があの狭い部屋いっぱいにキラキラと舞っていた様な気がして、とてもいい気分になるのです。



また、会いたいな。




  1. 2023/02/20(月) 19:01:26|
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