「Happy Halloween!!」
すれ違う仮装をした人々にそう声をかけられ、笑顔で鸚鵡返しをして手を振る。
写真を撮らせてほしいという人々に笑顔で答える。 ついでに私たちのツーショットもお願い。
今日の歌舞伎町はいつにも増して賑やか。
ハロウィン前の土曜日の昼下がり。
きっとわたしたちは、時計を連れて歩きたい我儘な彼女に付き合わされている彼。
そんな風に映っていたのでしょう。
わたしたちは今日を待っていた。
ずっと。
今日なら大丈夫な気がしていたんだ。
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彼に初めて会ったのは私が東京に来てすぐのことだった。
女装をしたい、そう言っていたけれど。
「友達からたまたま貰った」というドーランを持参してきたのだ。
なんとなく塗られてみたい気がする。
そんな風に言っていた。
顔を白く染めるとみるみる高揚する身体。
彼はそれから何度も「友達からたまたま貰った」ドーランを持って現れた。
それを否定したりはしなかった。
何となく、なんとなく。
彼は自分自身の性癖を受け入れられずにいるのではないかと思った。
私は特に何も聞かずに、顔や体に色を重ねた。
自身ですら受け入れられない性癖。
なら私が受け入れてあげるよ。
だって楽しいもの。私の楽しさがあなたの快感に繋がるなんて、こんな楽しいことはない。
それから暫くして、何故そうなったのか、ぽつりぽつりと語り始めた。
それは私と彼の秘密のお話だけれど。
きっとその頃から、自身の性癖を、自分自身を。
少しずつ受け入れられるようになっていった気がする。
「いつかはこの姿で外を歩いてみたい」
そんな風に言いだしたのはいつ頃だっただろう。
きっと、ハロウィンなら。
街中におかしな仮装をした人々が溢れかえる日なら。
大丈夫。出掛けられるはず。
わたしたちは今日を待っていた。
ずっと。
今日なら大丈夫。
黒い全身タイツに身を包み、顔を黒く塗る。
「時計になりたい」
それは彼からのリクエスト。
ベッドに寝かせて、馬乗りになり。
顔を黒く塗っていく。
私の太ももに、尻に。鼓動がどんどん伝わっていく。
体が熱くなっていく。
私は彼に合わせた服装をしてきた。黒いワンピースに帽子。
時計を連れて歩くのにはお似合い。
これはSMなの?
なんて野暮なことは聞かないで。
誰にも言えなかった秘密。
開けなかった心。
それを少しずつ解放してくれて、
「十三花さんに出会えて本当に良かったです」
なんて、少し瞳を濡らしながら言うのよ。
開けなかった心を開いてくれること。
これは私の快感の一つです。
十三花
- 2018/10/27(土) 16:18:56|
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この間は素敵な時計メイクありがとうございました。。
楽しいハロウィンになりました。
- 2018/10/28(日) 21:47:51 |
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